売り込まない営業が、売上をつくる理由〜「買いたくなる」信頼関係のつくり方〜

「商品説明もして、メリットも伝えたのに、なぜ買ってもらえなかったのだろう?」 「提案は良かったはずなのに、なぜ契約につながらないんだろう?」

営業に関わる人なら、誰しも一度は感じたことがあるはずです。

例えば、せっかく資料を丁寧に作り、プレゼンも万全に準備したのに、お客様の反応はどこか上の空。 「もう少し考えます」「他社とも比較したくて…」と、やんわり断られてしまう。

こちらとしては手応えを感じていた分、落胆も大きく、「どこが悪かったのか」と自問自答してしまう。 あるいは、トークに自信がある営業ほど、なぜ自分の話が刺さらなかったのかと、戸惑いや不安を抱えることもあります。

かつては「営業=クロージング力」「押し切ってなんぼ」という価値観が主流でした。 ですが今の時代、それは通用しなくなってきています。

今求められているのは、押す力ではなく、引き出す力。 売り込むのではなく、「話を聞いてもらえた」「この人なら信頼できる」と思ってもらえることが、契約や紹介につながるのです。

本当に売れる営業とは、「売り込まない営業」。 相手の話を丁寧に聞き、本音に寄り添い、その人にとって“必要な提案”をすること。 これこそが、今の時代に求められる営業スタイルです。

なぜ「売り込まない営業」が結果を出すのか

情報過多の時代=「買う理由」を探しているお客様

お客様は、すでにネットで商品情報を知っています。 スペック、価格、口コミ──事前にほとんどの比較ができてしまう時代。

だからこそ、営業担当者に求められるのは「情報提供」ではなく、

  • 自分にとっての“納得材料”
  • 自分では気づいていなかった“判断の視点” をくれる存在です。

たとえば、同じ情報を持っていたとしても、「この状況なら、こっちの方が合うと思います」と言ってくれる営業には価値があります。 それは単なる“知識”ではなく、“気づき”や“視点”を提供してくれるからです。

つまり、売る人から「考えを整理してくれる人」への転換が求められているのです。

▶︎参考記事:共感・同調が意思決定に及ぼす影響 
▶︎参考記事:共感の心理学

■ 無理に売られる=不信感につながる

人は「売り込まれている」と感じた瞬間、心を閉ざします。 どれだけ優れた商品でも、強くすすめられると本音では「ちょっと嫌だな」と思うものです。

特に近年は、「自分で選びたい」「納得して買いたい」と考えるお客様が増えています。 そうしたお客様に対し、一方的に話す営業スタイルは逆効果になってしまいます。

一方で、「ちゃんとこちらの話を聞いてくれた」「無理にすすめられなかった」という体験は、安心感や信頼感につながります。

この信頼が、「買ってみようかな」「この人から買いたい」に変わっていくのです。

営業の質を変える3つの視点

では、「売り込まない営業」を実践するには、何が必要なのでしょうか? ここでは、提案の質を変えるための3つの視点をご紹介します。

① ニーズの“奥”を見る(目的・価値観)

「コストを抑えたい」「手間を減らしたい」といった要望の裏には、 「もっと他の仕事に時間を使いたい」「ミスを減らして評価されたい」といった“目的”があります。

お客様の発言をそのまま受け取るのではなく、 「なぜそう思ったのか?」「何に困っているのか?」を探る質問をしてみましょう。

たとえば:

  • 「それが改善されると、どんな状態になりますか?」
  • 「いま一番、どこに不安を感じていらっしゃいますか?」

こうした問いが、信頼関係を深めるカギになります。 本音を引き出すことで、「この人は理解しようとしてくれている」という印象を与えることができます。

② 比較で終わらせない(導きと示唆)

お客様は、商品AとBで迷っている場合、価格や機能を比較しているだけかもしれません。 そこに「状況に合った使い方」や「他社事例」を添えてあげることで、 “自分にとっての答え”を見つけやすくなります。

営業は「選ばせる」より「導く」こと。

  • 「実はこの場面だと、BよりAのほうが…」
  • 「同じような課題を持っていた会社では、こう使っています」

こうした“判断のヒント”が、信頼される提案になります。 「この人は、うちの状況をよく見てくれているな」と思ってもらえると、契約に近づきます。

③ ノーを怖がらない(関係継続を意識)

「今すぐ買ってもらえない=失敗」ではありません。 むしろ、「今日は買わないけれど、また相談したい」と思ってもらえるかどうかが重要です。

  • 「無理におすすめはしません」
  • 「他社さんと比べてみてください。その上で必要でしたら、またお声かけください」

この余裕が、長期的な信頼を生み、将来の契約や紹介につながるのです。 営業は“今この瞬間の売上”だけを見るのではなく、“関係性のストック”を築く視点が重要です。

売り込まない営業で成果を出した実例

ある営業担当者は、以前は商談のたびにパンフレットとプレゼン資料を用意し、商品のスペックを中心に説明していました。

しかし、ある日から「とにかく聞く」「提案は最後に」という営業スタイルに切り替えました。 最初の30分は、相手の話に徹する。相づちを打ち、背景を掘り下げる。

最初は「何も話していない気がする」と不安もあったそうです。 でも、数回繰り返すうちに「他の営業とは違う」「売ろうとしていないから安心できる」と言われるようになりました。

その結果、「あの人は、商品じゃなく私の課題をわかってくれた」と評判になり、紹介が増加。 数ヶ月後には、同じ件数の訪問で契約率が1.5倍になったといいます。

このように、「売らない姿勢」がむしろ「信頼の証」となり、結果として売上につながるのです。

まとめ

売れる営業は、商品を売っていません。 信頼を売り、納得を届けています。

「売らなければならない」ではなく、 「この人の役に立ちたい」「よりよい選択をしてもらいたい」 そんな気持ちで関わることで、営業の本質は大きく変わります。

結果を出す営業は、相手の感情に寄り添い、必要なタイミングで必要な情報を届けています。 それは、相手の視点に立ち、安心と納得のプロセスを一緒に歩むという姿勢です。

売り込まない営業は、時代遅れではなく、むしろ最先端。 これからの営業の基準となるスタイルです。

■売り込まない営業 セルフチェック

以下の項目にチェックがつかない営業パーソンが多いと成果が出にくくなります。ぜひ参考になさってください。

項目 できている 見直しが必要
お客様の要望だけでなく、その背景(目的や価値観)までヒアリングしている
商品のメリットではなく、「この人にとってのメリット」を意識して伝えている
商談時、まずは“聞くこと”を優先している
「他社と比較してみてください」など、無理に勧めない言葉が自然に使えている
NOと言われても関係を切らず、次につながる会話を残している
導入事例や他社活用例を交えて「選ぶ判断軸」を提供できている
売ることより、「この人と話すと整理できる」と思ってもらうことを意識している

 


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